無断駐車は10万円。それでも駐車したらどうなるか
罰金10万円は高すぎる。駐車場オーナー側から請求されたら、素直に払わなくてはいけないのか。
月極駐車場で見かける「無断駐車は罰金10万円もらいうけます」といった警告文。たしかに無断駐車はいけないが、罰金10万円は高すぎる。駐車場オーナー側から請求されたら、素直に払わなくてはいけないのか。
まず罰金は刑事罰の一種であり、個人が勝手に額を決めて徴収するものではないことに注意したい。駐車違反の反則金(行政罰に科せられる過料)だとしても同じだ。そもそも月極駐車場は私有地で、道路交通法は適用外。無断駐車しても駐車違反にならず、反則金は発生しない。月極駐車場への無断駐車に、罰金や反則金を持ちだすこと自体が筋違いといえる。
無断駐車のトラブルは、基本的に民事の領域。勝手に車をとめたことで、オーナー側が無断駐車した人にお金を請求する権利(債権)が発生するかどうかが問題になる。
最初に考えたいのは、無断駐車時の支払いについて契約があったかどうかだ。長谷川裕雅弁護士は次のように解説する。
「契約は原則的に当事者間で申し込みと承諾があってはじめて成立します。契約として考えるには、駐車料金10万円として、オーナー側が看板で条件を明示して申し込んだと考える必要があるが、駐車した側の承諾はない。契約が成立したとみなすのは難しいでしょう」
ただし、契約には意思実現という特殊な形態もある。意思実現とは「申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合」(民法526条2項)も契約は成立するという考え方。
たとえば、ホテルに手紙による予約の申し込みがあって部屋を確保したら、その時点でホテルと予約者の間で契約が成立する。これに従えば、無断駐車の場合も、駐車した時点で10万円支払うという契約が成立したと主張できるのではないか。
しかし、「駐車したことをもって意思実現により契約が成立したとみなすことは困難」(長谷川弁護士)。やはり契約は不成立で、「事前に看板に書いてあるのだから払え」というオーナー側の論理は通用しないようだ。
では1円も払わずに済むのかというと、それほど甘くはない。無断駐車で不当に得た利益があれば返還の義務があるし(民法703条)、不法行為でオーナー側に損失を与えれば損害を賠償する責任を負う(民法709条)。問題は、その金額だ。
「月極駐車場への無断駐車なら、勝手に駐車した人が得た不当利益は近隣の時間貸し駐車場の駐車代金が目安になります。数時間とめただけなら、せいぜい数千円にも満たないでしょう。一般的には、実際の駐車料金程度しか損害賠償は認められません。万単位の請求は困難です。もっとも、無断駐車が一定時間継続した場合に、駐車場の所有者が駐車車両を撤去する必要も出てくるでしょう。撤去費用は所有者から損害賠償として請求される可能性があります」(長谷川弁護士)
看板の不当な文言通りに支払う必要はない。ただ、見つからなければタダ、見つかっても本来払うべき代金を払うだけで済むなら、無断駐車のやり得になるのではないだろうか。
「アメリカでは懲罰的な損害賠償額が認められています。しかし日本の司法では、実質的に損害を受けた分しか賠償が認められない。金額に表れない精神的ダメージを慰謝料として請求することもできますが、額は微々たるもの。たしかにこれではやり得を助長する面があるのかもしれません」(長谷川弁護士)
やり得を防ぎにくい司法制度のもとでは、駐車場オーナーが威嚇的に罰金を設定する気持ちも理解できる。言うまでもないが、最善は無断駐車しないことである。損得にかかわらず、ドライバーには高いモラルを求めたいところだ。